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F1ワッチ (F1watch)

Watching the Formula One from an Armchair

スイスの秘密口座が暴れ、ブリアトーレ、アロンソ、コバライネンの名が晒される

フェルナンド・アロンソ フラビオ・ブリアトーレ ヘイキ・コバライネン #SwissLeaks

おそらく #SwissLeaks というタグに気がついたF1ファンは多くないかもしれない。しかし英HSBCの元従業員が、同行のスイス支局の口座リストを国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)らに提供した件は世界的には大きな話題だ(参考:「スイスリークス」に日本人の名前も 脱税指南で揺れるHSBCの顧客リストとは)。

10万人分とも言われる顧客リストはその全貌がICIJによって公開されているわけではなく、現在は選択的に著名人の名が公表されているだけである。しかし、その中には複数の著名なモータースポーツ関係者も含まれているようだ。

Alonso with Race Official

現時点で、ICIJが用意した特設サイトによれば、フェルナンド・アロンソとフラビオ・ブリアトーレ、ヘイキ・コバライネンの名前を確認することができる。ここでは三者の口座の詳細と、それぞれの関係者から得られた理由説明を紹介しておく。

フェルナンド・アロンソ

Alonso was client of HSBC starting 2002. He was linked to the numbered client account “MAFDAF 851 ” that previously was held in the name “Fernando Alonso Diaz”. It listed four bank accounts that together held as much as $42.3 million in 2006/2007. The leaked files do not specify the exact role that Alonso had in relation to the account. (Explore the Swiss Leaks Data | International Consortium of Investigative Journalists)

ICIJが入手した口座リストを元にしたデータによると、アロンソは2002年からHSBCの顧客になった。これはアロンソが2001年のデビューイヤーをミナルディのレギュラードライバーとして過ごしたあと、ルノーで1年間のテストドライバー生活を過ごした時期にあたる。

アロンソを示す「MAFDAF 851」という顧客アカウントには、4つの銀行口座が登録されており、2006/2007年度の合計残高は約50億円だった。しかし、リークされた口座情報からは、アロンソがこれらの口座と具体的に関係を持っていたかどうかは明らかにできない、とICIJは説明している。

この件に関して、ICIJはアロンソのマネージャーであるルイ・ガルシア・アバド(Luis García Abad)からのコメントも併せて掲載されている。

Luis García Abad, Alonso’s manager told ICIJ that Alonso has been tax resident in different countries since 2001 and "has always declared all these accounts and investments in each of the countries." He said that while Alonso was a Swiss tax resident his wealth was mostly managed by Swiss banks. He explained that later Alonso moved from Switzerland to Spain, transferring most of his wealth to Spain, and that the accounts and investments he maintains in Switzerland and in other countries have been duly declared in Spain. (Explore the Swiss Leaks Data | International Consortium of Investigative Journalists)

マネージャーによると、アロンソは2001年から複数の異なる国家において税金を納めるようになり、今回指摘された全ての口座はそれぞれの国家に対応するものであるという。ルイ・ガルシア・アバドは、アロンソの資産の大部分はかつて英HSBCではなくスイスの諸銀行(Swiss banks)によって管理されており、スイスの納税者であった。しかし後のアロンソはスイスからスペインへ転居し、それにあわせて財産の大部分もスイスからスペインへ移動した。したがって、今回おおやけにされたアロンソの口座を含め、全てはスペインで正しく申告され租税の対象となっている、とルイ・ガルシア・アバドは説明している。

F1ワッチによる補足情報としては、今回のスイス口座が示す50億円の預金の時期、アロンソは2006年をルノーで過ごし2年連続2度目のチャンピオンを獲得した後、2007年からはマクラーレンに移籍した。アロンソのマクラーレンでの年俸は約20億円とも当時報じられており(参考:独紙がF1ドライバー年俸ランキング発表、佐藤琢磨選手は6億円で9位。 | Narinari.com)、それまでの預貯金と他の個人スポンサーからの収入に鑑みると、当時のスイス口座の総資産50億という数字は「リアル」であるようにも思われる。

フラビオ・ブリアトーレ

Briatore was linked to 9 HSBC client accounts. He was listed as beneficial owner of at least six of them: Benton Investments Inc., Pinehurst Properties, and numbered account “27361” (which closed in 2005); Adderley Trading Ltd (closed in 2004); and Formula FB Business Ltd and GP2 Ltd which remained active by the time of the leak. Through the nine client accounts, Briatore was connected with 38 bank accounts, which together held as much as $73 million between 2006/2007. (Explore the Swiss Leaks Data | International Consortium of Investigative Journalists)

今回リークされたデータによると、フラビオ・ブリアトーレは、HSBCに9つの口座を持っていたことが確認できる。そのうちの6つの口座で、彼は「実質的な所有者(beneficial owner)」として登録されていた。

  • Benton Investments Inc.
  • Pinehurst Properties
  • account “27361” (unnamed)
  • Adderley Trading Ltd
  • Formula FB Business Ltd
  • GP2 Ltd

ブリアトーレは9つの口座に関連して38の銀行口座を所有しており、それらをあわせて約80億円を2006/2007年度に所持していた。

これらのリークされたデータは、ブリアトーレが2009年のシンガポールGPでクラッシュゲートの首謀者として告発される以前のものを示している。GP2は2005年からスタートしたシーズンだが、ブリアトーレはその「実質的な所有者」として、彼の富の源泉となっていた点は味わい深い。

ICIJはもちろんブリアトーレの関係者からのコメントも合わせて掲載している。

Briatore’s lawyer Philippe Ouakra told ICIJ that the accounts and figures dated “back to more than 10 years ago with the effect that Mr Briatore is incapable of confirming or denying the details of your assertions.” The lawyer said further: “Mr. Briatore can confirm that he and certain companies of his group of companies – some of which were operated from Switzerland – have held certain bank accounts in Switzerland, in a perfectly legal way in any and all respects and in compliance, in particular, with any and all applicable tax laws and regulations.” In response to Ouakra’s assertions, ICIJ requested comment for five accounts still open in 2008. “Mr. Briatore shall make no further comment,” he replied. (Explore the Swiss Leaks Data | International Consortium of Investigative Journalists)

ブリアトーレの顧問弁護士をつとめるフィリップ・オークラによると、今回のリークは10年も前のことであり、事実かどうかをブリアトーレが確認できる範囲を超えている、という。さらに、ブリアトーレは彼の会社のいくつかはスイスを拠点に操業していたことを認めているが、それらはすべて完璧に合法的に運営され、特に税法については適切に運営されていた、と弁護士はICIJに語ったという。そこでICIJは、今回リークされた口座のうち5つは、2008年も開かれたままであった件についてコメントを求めたが「ブリアトーレ氏はいかなるコメントもおこなわない」と返事を得た、と記している。

ヘイキ・コバライネン

Heikki Kovalainen became a HSBC client in 2006. He was linked to a client account under his name that was connected to three bank accounts. Together they held as much as $132,765 in 2006/2007. During that time he listed a postal address in Oxford, UK. The leaked files do not specify the exact role that Kovalainen had in relation to the accounts. (Explore the Swiss Leaks Data | International Consortium of Investigative Journalists)

コバライネンは2006年にHSBCの顧客となった。そのアカウントは彼の名で開設されており、3つの口座と関連づけられている。2006/2007年度の口座には、合計で1500万円が確認できる。その時期、彼は英国のオックスフォードに住所が登録されていた。今回のリークでは、コバライネンがこの口座と実質的な関わりをもっていたかどうかを確認することはできない。

なお、2006年はコバライネンがルノーのテストドライバーとして活動した時期であり、2007年にはルノーのレギュラードライバーとしてF1デビューを果たした時期である。

コバライネン側の関係者からのコメントは得られていない。

以上、現時点では3名のF1関係者を、公開されたリストから確認することができた(他に、バレンティーノ・ロッシの名前も挙がっているが、今回は割愛した)。

一見して思うのは、ブリアトーレが財産管理まで含めたマネージメントを提供していた可能性である。アロンソもコバライネンも、ブリアトーレの影響下にあったドライバーであることは言うまでもないが、両者ともルノー/ブリアトーレ・F1と関係をもった時点からスイス支店の口座が開設され、両者とも直接彼らがその口座と関係していた事実が確認できない。

ブリアトーレ側は一貫して「ノーコメント」を貫いているが、今後、彼に関連したF1ドライバーの名が次々とリークされるとすれば、「F1の改善策」を練り上げようという委員会にブリアトーレを復帰させようというバーニー・エクレストンの思惑は、大きな打撃を受けることになるだろう。もちろん、ブリアトーレが実質的にレース界に復帰を果たそうという時期にこのようなリークデータが明らかにされたことは、彼のイメージを悪化させる可能性がある。もちろん、さらに悪化する余地があればだが。

最後に、いくつかF1ワッチから #SwissLeaks の読みかたをメモしておきたい。

今回のスイス・リークスで明らかにされたのは、2006/2007年度の会計分であり、全ては過去のものである。それらの口座が現在まで開かれ続けているとは限らない。さらに、HSBCスイス支店の顧客リストに掲載されているからといって、その全員が「脱税」や「マネーロンダリング」に関与していたというわけではない。その点で、有名人の口座を選択的に公開していくというICIJの「やりかた」は批判の対象ともなっている点は注意したい。

(CC) 画像出典:Alonso with Race Official | Flickr - Photo Sharing!