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F1ワッチ (F1watch)

Watching the Formula One from an Armchair

ホンダだけがF1エンジン開発を凍結されるのは、本当に「公平」なのか

ホンダ エンジン レギュレーション

2015年シーズン、各社は凍結されていたF1エンジンを開発しながら戦うことができる……ただし、ホンダ以外のメーカーは、という条件つきである。

HONDA F1

本件、既に翻訳ニュースも出回っており(Hondaの2015年中の開発は認められず? | ESPN F1)、日本語では「早くもジャパンいじめか」との声もTwitterで散見される。

しかし、ホンダ=日本だと考えるのは早計である。ホンダはマクラーレンとジョイントしており、かつアロンソとバトンという二名の「ヨーロッパ人」を載せている。政治的な利害関係は複雑だ。そこで本記事では改めてFIAがホンダを除外する意図と、その決定を覆す可能性を整理してみたい。

FIAの意図は「公平さ」を守ること

今回、2015年シーズン中のエンジン開発が許可されたのは、何か特別な決定が新しくなされたからではない。既に書かれて発効しているレギュレーションを厳密にチェックした結果、ルールの新しい「解釈(interpretation)」が提案されたのだ。

伝えられるところでは、2015年シーズンに向けてのエンジン開発凍結(homologation)の「締め切り日」がレギュレーションに書かれていないことをフェラーリが「発見」し、ルノーと共闘してFIAにかけあった。

the FIA accepted there was a loophole in the regulations. (F1 teams can develop engines in season after FIA admits loophole - F1 news - AUTOSPORT.com)

それをうけて、Autosports.comが伝えているように、FIAはレギュレーションに「抜け穴(loophole)」が存在することを認めた。ルールに開発凍結の締め切り日が書いてないんだから、いつまで開発していたっていいだろう、という「解釈」を認めたということになる。

今回のレギュレーションの新解釈が「抜け穴(loophole)」と言われているのがポイントだ。

A loophole in the law is a small mistake which allows people to do something that would otherwise be illegal. (Cobuild English Dictionary)

コウビルド英英辞典によると、「法律における loophole とは、小さな手違いのことである。それは人々が違法な何かをすることを許可するものである」。つまり、FIAは、フェラーリらの解釈がレギュレーションの真意に背くものであるが、そのような解釈を妨げることはできないと考えたと読むことができる。

成文化されたものを尊重し、その解釈における戦いは全員にひとしく開かれており、平等である……という精神は、きわめて西洋的なものだとF1ワッチは感じたが、いかがだろうか。

ホンダ「だけ」が除外される理屈とは

しかし、この「エンジン凍結の締め切り日が書かれていない」という点は、実はホンダに対しても同じなのである。

Although the regulations do not specifically state dates for the Japanese car maker to submit its homologated unit (F1 teams can develop engines in season after FIA admits loophole - F1 news - AUTOSPORT.com)

その意味では、ホンダにもこのレギュレーションの「新解釈」は等しく適用され、他のメーカーと同様に2015年シーズン中も開発ができるはず……だったのだが、ここでFIAによる新たな判断が介入する。

"As the existing manufacturers were obliged to homologate their power units by 28 February 2014 it would seem fair and equitable to ask a new manufacturer to homologate their power unit before February 28 2015. We therefore consider this to be a requirement for a new power unit manufacturer." (F1 teams can develop engines in season after FIA admits loophole - F1 news - AUTOSPORT.com)

昨年からエンジンを供給したメーカーは、2014年2月28日を凍結日としていた。だから、今年からエンジンを供給するメーカーは、昨年の流れを踏襲して、2015年2月28日を凍結日とすることが「正しく(fair)、かつ公平(equitable)である」と考えられる——これがFIAの判断である。

先ほどの成文化されたものの解釈に比べると、こちらは成文化されていない。あくまでも慣習と意図によるものなので、決定には曖昧さが残るように思われる。

二つの異なる決定の複合体

ここに至るまでに、二段階の決定がなされたことに気がついただろうか。まず、(1)フェラーリによるレギュレーションに既に書かれている内容の「新解釈」が提案され、FIAに認められた。そして、(2)レギュレーションに書かれていない「判断」がFIAによってなされて、ホンダが除外された。ことになる。

まず(1)については、既に書かれている文章の解釈の問題なので、レギュレーションが変更されない限りは、有効であると思われる。しかし、(2)については、あくまでもFIAによる判断であり「配慮」なので、おそらく政治的に覆す余地はまだあるということだろう。

したがって、現時点ではホンダは2015年シーズン中のエンジン開発凍結から「除外」されているものの、最新のニュースが伝えるような(Honda、凍結緩和についてFIAと会合へ | Formula 1 | F1ニュース | ESPN F1)、ホンダがFIAに掛け合うという姿勢は、(理屈の上では)合理的である。FIAの気を変えさせれば良いのだから(もちろんその背後に蠢いている何かをなんとかしなければいけないのだろうが、それは別の問題である)。

さて、これからが政治力だ。いったい何が「公平」なのか。公平さをめぐる戦いが始まっているのだ。この公平さ(fairness)をめぐっては、ヨーロッパの基準で戦うことが求められる。

政治力といえば、あのBARからホンダにかけての活動で、最も欠けていたと考えられていた要素だ(そういえばトヨタにもなかった)。ヨーロッパの内部に入り込み、その判断に影響を与えることができるのか……既にホンダの戦いは始まっている。ある意味で、今こそが2015年シーズンの正念場である。戦いが始まる前に負ければ、既に勝負はできないのだから……。

しかしF1ワッチの見立てでは、凍結解除の可能性は残されている。それがレギュレーションに書かれているのではなく、FIAによる「判断」である以上は、変更可能である。

(CC) 画像出典:HONDA F1 | Flickr - Photo Sharing!