F1ワッチ (F1watch)

Watching the Formula One from an Armchair

プロサイクリングチームはF1の失敗から学ぶべきである

今年のイギリスはおかしなことになっている。短期間に世界的スポーツが詰め込まれすぎだからだ。現在、シルバーストンではイギリスGPが開催されているが、かたやロンドンではテニスのウィンブルドン選手権、さらに北イングランドではサイクリングの世界的イベントであるツール・ド・フランスが開幕する(今年のツール・ド・フランスはイギリスからスタートしてフランスへ向かう)。

それはともかく——そんなツール・ド・フランスに代表されるプロサイクリングの世界で、スポンサー離れが進んでおり、プロチームは窮地に立たされているという。当ブログでも自転車の「チーム・アロンソ」構想について何度か触れてきたように(アロンソが計画中の自転車プロチーム、UCIに優遇処置を求める - F1ワッチ (f1watch)ジロ・デ・イタリアは終わったが、アロンソのチーム作りは終わらない - F1ワッチ (f1watch))、ヨーロッパではサイクリングはメジャーな競技であり、F1関係者との距離も近い。

普段はF1のビジネス面を語っているブログ『スポーツマーケッター』が、そんなサイクリングの世界に焦点をあてた記事をリリースしたので、紹介したい。もちろんF1の世界で学んだことを、十分に反映させた内容だから、F1ファンにも楽しんでもらえるはずである。

Tour de France 2005

Pro Cycling’s Sponsorship Crisis

(Quoted from SPORTSMARKETER)

It’s the start of the Tour de France this weekend, and there’s lots of excitement, particularly in Yorkshire, the host of this years Grand Depart. They’ll be mixed feelings within the sport’s top (World Tour) teams however as they struggling financially.

今週末、ツール・ド・フランスが興奮のなかで開幕する。今年のグランデパールの地となった英国のヨークシャーではなおさらのことだ。しかしながら、サイクリングの世界のトップで活躍するワールドツアーチームは、財政的には苦戦しており、興奮と不安が入り交じった感情を抱くことになるだろう。

The business model that operates in cycling is one that relies heavily on sponsorship. Most of the teams have to fund their season entirely through sponsorship or suppliers. Given that team budgets can run to $30m per annum – although most operate in the $12m-$18m range – that’s a significant amount of sponsorship to secure!

サイクリングの世界におけるビジネスモデルは、スポンサーシップに過度に依存している。多くのチームは、ワンシーズンを戦うための資金を全面的にスポンサーと製品サプライヤーに依存している。チームの予算は、おおむね年間3億円だが、多くのチームは1億2千万から1億8千万の範囲でやりくりしている。これはスポンサーの獲得が重要な意味を持つことを意味している。

[訳註:フェルナンド・アロンソの2014年の年俸は30億円前後とみられており、彼にとってプロサイクリングチームは「安い買い物」であることがわかる。]

The teams are however trying to take control of their destiny. Last year, they formed what is called the “Avignon Project,” meeting to discuss ways to change the financial hierarchy in cycling and how they might secure income from race promoters who sell the TV rights.

プロチームは、しかしながら、自らの運命を自分でコントロールしようとしている。昨年は、チームは「アヴィニョン・プロジェクト(Avignon Project)」と呼ばれる団体を組織し、サイクリング界における財政構造を変革する方法を話し合うために集まり、テレビ放映権の売却して利益をあげているレースプロモーターからどうやって安定した資金を引き出すかについて検討を始めた。

[訳註:参考記事に、サイクリング解説者の栗村修が2014年1月にポストした「Osamu Kurimura: アヴィニョンプロジェクト」を挙げておく。]

The Avignon Project reminds me of FOTA (the Formula One Teams Association) which was set up for a similar reasons – however it ultimately failed because the select teams that have enough money, aren’t particularly interested in anything that might erode their advantage. FOTA was disbanded last year after achieving very little.

アヴィニョン・プロジェクトは、FOTA(フォーミュラ・ワン・チーム・アソシエーション)を想起させる。それらは似たような理由で設立されたからだ。しかしながら、最終的にはFOTAは失敗した。なぜなら、FOTAをが十分な資金をもった選ばれたチームだけで構成され、そうした有力チームのアドバンテージを失わせるような何事にもFOTAは関心がなかったからだ。FOTAは、ほとんど何事も成し遂げないままに昨年解散した。

It would be much simpler if cycling was structured like many other sports, such as Formula 1 (see inset for explanation) but it isn’t.

もしプロサイクリングが、他の多くのスポーツ、例えばF1のような内部構造を持っていたとすれば物事はより簡単に進むだろうが、現実はそうではない。

To create this central structure in cycling will take a great deal of time – in truth I don’t think it would ever happen. It’s hard enough to strike an agreement between two parties.

サイクリングの世界で、[F1でバーニー・エクレストンが成し遂げたような]中央集権的な構造を作り出すには、長い時間がかかるだろう。実際、私はそれが実際に完成するのかどうか疑わしく感じている。サイクリングの世界で重大な商業圏をもつASO(ツール・ド・フランス)とRCS Sport(ジロ・デ・イタリア)のあいだで合意を得ることは極めて困難である。

The issue as I see it, is that cycling teams are selling sponsorship and treating sponsors on a model that would have been called out-dated 20 years ago. [....] All people from within cycling talk about is brand media exposure and performance. “The brand got $30m of media exposure at the Tour”. “We won two stages”. etc etc.

そして、私が見るところでは、サイクリングチームはスポンサーシップを売りながら、もう20年前に時代遅れになったようなモデルで、スポンサーたちを取り扱っている。サイクリングの世界の関係者がいつも話すことは、ブランド、メディア露出、そしてパフォーマンス(成績)である。「このブランドはツール・ド・フランスでメディアに露出して、3億円の価値があった」とか「俺たちは2つのステージで優勝した」とか、とか。

Media exposure doesn’t have a tangible value to the business, they can’t pay employees, suppliers, shareholders or build new stores with media exposure. To explain, I’ve no doubt Belkin were happy that the team performed well and their brand is more recognisable, but if that doesn’t impact sales revenue why should they continue to spend their sponsorship dollars on the team!

メディア露出は、そのビジネスにとってほとんど価値を持っていない。メディアにブランド名が露出するだけでは、社員にもサプライヤーにも株主にも支払えないし、そのブランドにまつわる新しい物語を生み出すこともできない。説明しよう。私は例えば(プロサイクリングチームのひとつである)ベルキンが、そのチームの成績に満足しており、メディアへの露出にも不満はないだろうと確信している。しかし、もしそれがベルキン社の売り上げになんのインパクトもないのなら、なぜチームのスポンサーとして何億円も費やし続ける必要があるだろうか。

以上、スポーツマーケッターの記事を紹介した。ではサイクリングチームはどうすればいいのか?という解決策については、元記事に3つの提案があるので、もし興味があれば読んでいただきたい。

こうして他のスポーツと比べると、F1がいかに商業的に整備されてきたのかがよくわかる。それはバーニー・エクレストンという老人が成し遂げた世界であり、そこにサイクリングのようなスポーツは、憧れるのだ。

しかしもちろんF1ファンである我々には、そんな中央集権的なF1の構造が、問題含みのものであり、未来永劫まで続くものには見えていないことも事実だ。サイクリングはF1を「迂回」して、もっと別の21世紀的な何かを目指すべきかと思うが……

(C) 記事出典:Pro Cycling’s Sponsorship Crisis | SPORTSMARKETER

(CC) 画像出典:Tour de France 2005 | Flickr - Photo Sharing!

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