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F1ワッチ (F1watch)

Watching the Formula One from an Armchair

元レッドブルF1代表、英国サイクリングの技術部トップに転身

トニー・パーネルという名前に聞き覚えはあるだろうか。彼はレッドブル・チームの初代代表を務めた英国人だ。そもそも彼はジャガーの二代目の代表としてF1チームの建て直しに尽力していたのだが、2005年末にチームごとレッドブルに買収された。新オーナーのディートリッヒ・マテシッツがクリスチャン・ホーナーを新代表として送り込んでくるまで、パーネルは数ヶ月間にわたってレッドブルのチーム代表を務めたのだ。

しかし現在の彼は、今や、英国サイクリング協会の技術部門を率いる立場である。マクラーレンとスペシャライズドが協同してロードバイクを開発するなど、特に技術面ではF1とサイクリングの距離は近い(参照:S-Works + McLaren Venge)。英誌『サイクリスト(Cyclist)』がパーネルにインタビューした記事で、彼がF1時代を回顧していた部分がひときわ興味深かったので、紹介したい。あのランス・アームストロングも登場する。

Formula 1

Can This Man Make Britain Faster?

(Quoted from Cyclist March 2014. pp.74-5.)

Although Purnell kept a low profile, he became a renowned figure --- described by his previous employer, Jaguar, as a 'horrifying clever engineer'.

トニー・パーネルは特に知られた存在ではなかったが、彼の以前の雇い主であるジャガーによって「ぞっとするほど頭が切れるエンジニア」と評されるなど、名の知られる人物となった。

He has designed a wealth of electronics systems for Formula One racing --- much of it deemed revolutionary. His inventions include pioneering technology used to communicate between F1 cars and the pits during races, providing the teams with reams of live data on all aspects of their cars' and drivers' performance. He was also the first to integrate strain gauges into the wind-tunnel process, a huge leap forward in data gathering.

彼はF1においてさまざまな電子機器を設計してきた。その多くは革命的と見なされるものだ。彼の発明には、レース中にF1マシンとピットのあいだで通信するために用いられる先駆的な技術が含まれている。あらゆる角度からマシンとドライバーのパフォーマンスに関する大量の生データをチームは集めることができるようになった。彼の功績は他にもある。はじめて「ひずみゲージ」を風洞実験に取り入れたのもパーネルだ。これは風洞におけるデータ収集において飛躍的な進歩を生み出した。

Purnell got his first gig with Newman/Haas Racing, an IndyCar Racing outfit set up by film star Paul Newman. "I think there were five of us on the research and development team and three guys did the whole car,' Purnell says.

パーネルはニューマン・ハース・レーシングで、最初の仕事に就いた。映画スターであるポール・ニューマンが設立したインディカーのチームだ。「私が思うに、研究開発部門には5人いて、マシン全体を見ていたのは3人だった」とパーネルは語った。

Not content with working on the technological side alone, Purnell also embraced management and rose to become team principal for Jaguar Racing in F1. Despite exceeding expectations, Ford eventually pulled the plug on the Jaguar team, and Purnell quickly found employment with Red Bull Racing, but all did not go quite to plan.

パーネルの活躍は技術面だけに限られるものではない。彼は他にもマネージメント面も手がけ、F1ではジャガー・レーシングのチーム代表まで出世した。多くの期待があったが、フォードは結局ジャガーチームから手を引くことになったので、パーネルはすぐにレッドブル・レーシングと契約することになった。しかし全てはまったく計画通りには進まなかった。

'It was a disaster from day one because they were a marketing company and they didn't really realize what they'd got into, so we did argue,' he says. 'But I have to say they've done a very good job, so hats off to them.' The clash with Red Bull led Purnell to an unlikely start in cycling.

「レッドブルとの仕事は大惨事だった。初日からね。彼らはマーケティング会社だった。彼らは自分たちがどんな世界に飛び込んできたのかわかっていなかったのだ。だから我々は議論を重ねた」とパーネルは語る。「しかし、彼らはいい仕事をした。それは認めなければいけないし、脱帽だ」。レッドブルとの衝突は、パーネルをサイクリングの世界での思いもよらなかったスタートへと導くことになった。

'I'm never sure whether to mention this,' he says, 'but I did go and work for Johan Bruyneel and Lance Armstrong for a very short while because they wanted a new radio. We build a fairly complex radio that was all in the helmet. It weighed about 120g but they didn't like it --- the climbers refused to have any weight in the helmet because they said they didn't like the pendulum effect.

「このことを話すのは初めてなんだが」とパーネルは言う。「私は、ヨハン・ブリュイネールとランス・アームストロングのためにとても短い期間だったが仕事をしたことがある。彼らが新しい通信装置を欲しがったからだ。我々はとても複雑な通信機を作って、全てをヘルメットの中に収めることに成功した。120gほどの重量しかなかった。でも、彼らはそれが気に入らなかった……特にクライマーたち[訳注:急斜面の山に登ることを得意とする自転車選手たち]はどんな些細な重量物でさえヘルメットの中に収めることを拒否した。振り子効果で頭が左右に振られることを嫌ったんだ」

While for Purnell it was a revolution, Bruyneel's foray into F1 technology didn't bear fruit and the pair parted company soon after. But it was an early chapter in the story of cycling's attempts to draw on the knowledge of the world of F1. It's a story that has begun to see a shared interest from both sides.

その通信機はパーネルにとっては革命的なものだったが、ブリュイネールのF1技術への関心はその時点では実を結ばず、両者は袂を分かつことになった。しかし、これはサイクリングがF1の知識を利用しようと試みはじめたごく初期のエピソードに過ぎない。パーネルとブリュイネールの通信機に関する逸話は、F1とサイクリングが共通の関心を抱き始めたことを示している。

'I remember I went for lunch with one of the technical director of the biggest [F1] team and all he could talk about was cycling. I couldn't get him onto Formula One,' Purnell laughs. 'In a way cycling is more engaging,' he says, 'Bear in mind that F1's a strange kind of exercise that has very little relevance to anything.'

「とある強豪F1チームのテクニカル・ディレクターとランチをしたときのことを記憶している。その人の話題といったら、すべてがサイクリングについてのことだったんだ。彼とF1の話をすることは不可能だったよ」とパーネルは笑う。「心に留めておかねばならないのは、F1における特殊な仕事は、他の何事にたいしてもほとんど関連性がないということだ」

以上、英誌『Cyclist(サイクリスト)』から、トニー・パーネルのインタビューの冒頭部分を抜粋して紹介した。僕はこの雑誌を、英国の空港の書籍売り場で偶然目にして、手に入れたのだ。

Cyclist: The Road Cycling Magazine

Cyclist: The Road Cycling Magazine

ランス・アームストロングやヨハン・ブリュイネールの名前がでてきてドキッとしたのは、彼らがサイクリング界の大物だからというだけではなく、近年のドーピング・スキャンダルの渦中にいる二人だからだ(参照:ヨハン・ブリュイネール(ランスアームストロング所属チームの当時監督)らが、競技への関与を10年間禁止された - 世界のドーピングニュース)。

プロの自転車ロードレースは、F1と同じようにチーム戦である。だから通信機器は重要な役割を果たしており、各選手は無線機をつけて走り、チームマネージャーも選手に対して無線で指示を送る。現在のF1とサイクリングのあいだの共同作業は、車体開発から空力面まで及んでいるが、初期の段階では無線機であったというところが面白い。

トニー・パーネルは、2003年から英国サイクリング協会のなかで技術開発部門に相当する「Secret Squirrel Club」のトップに就任し、その頭脳を生かし、これからもさまざまなF1の技術をサイクリングの世界へと応用していくことになるだろう。

(C) 記事出典:Cyclist March 2014. pp.74-80.

(CC) 画像出典:Formula 1 | Flickr - Photo Sharing!

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