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F1ワッチ (F1watch)

Watching the Formula One from an Armchair

バーニーがセナの死を弟レオナルドに伝えた瞬間

もう20年も経つのに、セナの死について多くの関係者の個人的なコメントが相次いでいる。中でも、セナの個人的な広報担当者を務めていたベティーズ・アスンサオン(Betise Assumpção)のブログが生々しい(SENNA: WHAT BERNIE REALLY SAID TO LEONARDO SENNA | BetiseSportsWorld)。事故の直後、イモラでアイルトンの弟レオナルドが、バーニー・エクレストンからセナの死を伝えられた瞬間、彼女は通訳として同席していたのだ。彼女はその瞬間について間違った情報が出回っており、多くの人が誤解しているという。

Ayrton

In the last couple of months, I have been revisiting that tragic weekend of the San Marino Grand Prix 1994 practically every day.

この数ヶ月というもの、私はあの悲劇的な週末について、もう一度考えていた。1994年のサンマリノGPについて、ほとんど毎日のように。

There are, inevitably, an immense amount of material written, photos and videos. The internet is inundated with tributes and these last couple of weeks there have been half a dozen Tv programmes in Brazil alone.

当たり前だが、アイルトンの死について、無数の記事や写真、ビデオが存在する。インターネットには追悼の言葉が溢れていて、この数週間というもの、ブラジルだけでも半ダースはテレビ番組が放映された。

I find IT difficult to read things like : “Ayrton was quiet that morning, he was thinking about his fellow driver Ratzembergs…” How can anyone know what he was thinking??

中には読むに堪えられないものもいくつもある。例えば「アイルトンはあの日の朝、無言だった。彼はラッツェンバーガーの死について想いを巡らせていたからである」……いったい誰がどうやってアイルトンが「考えていたこと」をそんな風に言い当てられるというのだろう?

The worst of them all for me is: “Bernie told Leonardo on that day that Ayrton was dead……” Some people misplaced the event, others the timing and that made them change the story into something completely different to fit the purpose of their stories.

そんな信用ならない情報の中で、私にとって最悪なものはこれだ——「あの日、バーニーは(アイルトンの弟である)レオナルドに、アイルトンが死んだと伝えた」——何人かはこの出来事を勘違いしているし、それ以外の人々は適当に端折って、物語を何か完全に違うものへと変えてしまっている。出来事をそのまま伝えようというのではなく、何か別の目的のために利用するためだ。

Through this blog, I have decided to tell some parts of what really happened.

だから私は、このブログで、あの時イモラで本当は何が起きたのか、部分的にせよ語る決心をしたのだ。

Leonardo and I left the Williams garage and walked towards the information/FIA tower in Imola to try and get more information. As we approached it, Bernie was coming out. He looked at us and said to Leonardo, grabbing him gently by the arm and directing him to the FOCA motorhome. “I need to talk to you”.

レオナルドと私は、ウィリアムズのガレージから出て、イモラのコントロールタワーへ向かって歩いていた。アイルトンの事故についての情報が欲しかったからだ。私たちが近づいていくと、バーニーが出てきた。彼は私たちを見ると、レオナルドに「話がある」と言い、腕で優しく誘導しながら、FOCAのモーターホームへと連れていこうとした。

So I translated it to Leo and walked along with them. Bernie turned to me and said. “Not you”.

私はレオナルドにバーニーの言葉を訳して伝え、一緒に歩いていった。バーニーは私の方を向いて「君は来なくていい」と言った。

So I explained. “Leo does not speak a word of English” . Bernie nodded and had to accept, directing us both into the motorhome.

だから私は「レオナルドは英語がわかりません」と説明した。バーニーはよろしいと頷き、私たち二人をモーターホームへと連れて行った。

We stepped in and Slavica was there already, on her own, very shaken and in tears. Bernie sat on the arm of a chair and we both on the sofa in front. Bernie told us he had some news of Ayrton. Leo was white.

私たちがFOCAのモーターホームに入ると、そこにはバーニーの妻であるスラヴィカがいた。彼女はとても動揺しており、涙を流していた。バーニーは椅子に座ると、私たち二人をソファに座るように促した。バーニーは、アイルトンについて伝えたいことがある、と私たちに言った。レオナルドの顔は蒼白になっていた。

“He’s dead”, Bernie said.

「彼は死んだ」と、バーニーは言った。

I thought for a few seconds, “how can I translate it and tell Leo in a more adequate manner, considering he only spoke two words!!” .

私は頭のなかで必死に考えていた。私はバーニーの言葉をどうやって通訳すればいいだろう、レオナルドに対していったいどんな表現を用いるべきだろう、バーニーはたった二つの単語しか口にしなかったのだ!

So I turned to Leo and, in the most gentle and caring way I could master at the time, and said: ” I am really sorry to have to translate that to you but Bernie is telling us Ayrton has died.”

私はレオナルドに向かって言った。私があの時できうる最も穏やかで、気を遣った言い方で。「これをあなたに通訳するのは本当に残念なことだけれども、バーニーは、私たちに、アイルトンは死んだ、と言いました」

Leo was stunned. He stared at me, then at Bernie. He did not say a word. I wanted to hug him. He started to sob. Then Bernie added:

レオナルドはがく然となった。彼は私をぼおっと見つめていたが、その後、バーニーへ視線を移した。彼は何も言うことができなかった。私は彼を抱きしめた。彼はむせび泣き始めた。

“But we are not announcing it yet so the race won’t be stopped”. And I translated to Leo. Even before I finished it. he was already desperate, sobbing loud and shaking like if in a fit. I really did not know what to do. I had never seen such a raw pain.

すると、バーニーが「しかし、私たちはまだそのことを公表していない。だからレースは中止しない」と付け加えた。私がその言葉をレオナルドに通訳し終わる前に、彼は既に大きな声をあげて泣きじゃくり、絶望的な様子で、怒ったように震えた[訳注:原文の「shaking like if in a fit」をうまく訳出できなかった]。私は本当にどうすればいいのかわからなかった。私はそんな生々しい痛みを受けた人を、これまで見たことがなかった。

Bernie got up, picked up an apple and talked to Slavica who then started to sob as well. It took me a few minutes to sort of get Leo back to himself. He was still very stunned and incapable of saying anything when I said to him, again in the most gentle way I possibly could. Holding his hands on mine.

バーニーは立ち上がると、林檎をひとつ手に取り、既に嗚咽を漏らしていたスラヴィカに向かって話しかけた。レオナルドに自分を取り戻させるために、私はしばらく時間を費やした。彼は依然として激しく泣いていたし、何か言うことができるような状況ではなかった。再び、私はもう一度、彼に可能なかぎり優しく伝えた。彼の手を握りながら。

“Leo, I am truly, truly sorry. I don’t know what else to say to you but one thing is certain. You have to pull yourself together as well as you can and you need to call your parents in Brazil and tell them. They’ll be worried sick and I cannot be the one to do that. They will need to hear it from you. I am sure it will be more comforting for them as well”

「レオナルド、本当に、本当に、残念です。私はあなたに何を言えばいいのかわかりませんが、一つだけ確かなことがあります。あなたは、元気を出して、ブラジルのご両親にこのことを伝えるべきです。彼らはとても傷つくだろうから、私がかわりに伝えることはできません。あなたのご両親は、アイルトンの死を、直接あなたから聞きたいでしょう。それがきっと彼らにとって慰めになるはずです」

I explained it to Bernie and he immediately offered the motorhome phone and Leo made the call.

私がバーニーにこのことを説明すると、彼はすぐにモーターホームの電話を使って、レオナルドに電話をさせてくれたのだ。

バーニーがレオナルドにアイルトンの死を伝えたシーンを、短い歯切れのいい過去形の文章で淡々と綴っている部分を紹介した。彼女はレオナルドの通訳として、その場に居合わせていたのだ。紹介した部分までで、彼女の記事はまだ半ばで、この後はFIAのプレスオフィサーとのやり取りも生々しく記録されている。

この元記事で、僕にとって印象深かったのは、確かにバーニーのモーターホームでの四人のやり取りもだが、それ以上に、冒頭に彼女が記したような、世の中に出回っているアイルトンについての情報のいくつかが我慢できない、という彼女の率直な想いだ。彼女はセナの広報担当者を務めていたので、よりいっそうそういう想いも強いのだと思う。

もういい加減セナはいいだろう、そんな昔のことは知らない、という言葉もだんだん増えてきたし、僕自身もそろそろセナのことはいいのではないか、と考えることもある。しかし時が経つことで新しく出てくる情報もある。それが歴史になれば、当事者たちが徐々に口を開き始める。その意味では、これから25年、30年と経っても、新たな証言が出てくるだろう。インターネットは、そういった人々が直接自分たちの言葉を綴ることができる貴重なメディアだ。

この記事をもって、20年目の追悼としたい。

バーニーがモーターホームで林檎を手に取るシーンがある。あれはリアルだ。英国では(ヨーロッパでも?)、日本で食べているよりもかなり小振りな林檎を皮ごと丸かじりする。バーニーも、自然と林檎に手が伸びたのだろう。

(C) 記事出典:SENNA: WHAT BERNIE REALLY SAID TO LEONARDO SENNA | BetiseSportsWorld

(CC) 画像出典: Ayrton | Flickr - Photo Sharing!

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