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F1ワッチ (F1watch)

Watching the Formula One from an Armchair

F1が目指すべき未来とは

環境問題

AP通信のスポーツ・コラムニストのジョン・レスターが、2014年から本格化したF1の燃費規制を歓迎する記事を書いた(Column: Fuel-careful F1 less of a guilty pleasure - Sport - NZ Herald News)。この記事を「すべてのF1ファンが読んで考えるべき記事だ」として紹介したのが、ジョー・サワードである(A very smart view | joeblogsf1)。彼は経験を積んだF1ジャーナリストであり、しばしば「F1ムラ」の内情を暴露するような辛口のコラムを書くことで知られている。そんな彼が推薦する記事がいったいどんな内容だったのか、興味を持たないはずがない。

Yas Marina Hotel/ Yas Viceroy Abu Dhabi, UAE.

もう自分を騙すのはやめようじゃないか。

Let’s not kid ourselves: Strapping drivers into combustion engines can never be a “green” sport. Polar bears on retreating ice sheets shouldn’t dance with joy -”We’re saved!” – simply because F1 downgraded this season from monster 2.4-liter, V8 engines to somewhat less viciously thirsty 1.6-liter, V6 turbo hybrid engines.

どんな理屈をつけても、ドライバーたちを燃焼エンジンに縛りつけて競わせるスポーツが「環境に優しい」はずがない。2.4リッターV8エンジンを1.6リッターV6ターボエンジンにダウンサイズしたからといって、「これでボクたちは救われた!」と、地球温暖化で住む場所が徐々に失われつつあるホッキョクグマたちが踊って喜ぶはずはないのだ。

In the real world, a midsize Toyota Prius hybrid might cover about 2,500 miles on those same 50 gallons, almost enough to cross the United States from Washington DC to Los Angeles, according to fuel economy figures for that model from the U.S. government’s Environmental Protection Agency.

F1が決勝レースに必要とする50ガロン(約189リットル)の燃料があれば、ハイブリッドエンジンを積むトヨタのプリウスなら、約4,000kmを走ることができる。東海岸のワシントンDCから西海岸のロサンゼルスまで、アメリカ大陸を横断できるのだ。

F1 wouldn’t be F1 without excess. Fans worldwide wouldn’t tune in for World Champion Sebastian Vettel driving a Prius.

F1は、浪費することをやめたら、F1ではなくなってしまう。世界中のファンは、セバスチャン・ベッテルがプリウスを運転して世界選手権を戦うところなんて、見たくないだろう。

But as road cars become more fuel efficient, with electric and hybrid-engine technology making increasing inroads, F1 needed to reconnect with its time or risk becoming an anachronism, racing on regardless the costs to the environment. This season’s switch to fantastically complex hybrid engines puts F1 back ahead of the technological curve.

しかし、F1は時代にあわせなければいけない。市販車の燃費がどんどんよくなり、電気やハイブリッドのエンジン技術がより広まりつつあるからだ。そうしなければF1は、環境に対する悪影響を無視したレースとして、時代遅れのものになってしまう危険性がある。今シーズンから導入されたハイブリッドエンジンはとてつもなく複雑なシロモノだが、F1を技術革新の最先端へと連れ戻すことになるだろう。

That is exactly where the sport must be to retain fans and stay relevant in today’s energy-challenged world.

これこそが、このスポーツがファンをつなぎとめ、エコであることを追求しつつある現在の世界に留まるために絶対に必要なことなのである。

The 100-kilogram-per-race allotment of fuel would still get a Prius from Paris to Moscow. But at least F1 can now argue that it is going in the right direction.

2014年から導入された「1レースあたり100kgのガソリン」ルールをもってしても、依然としてプリウスならパリからモスクワまでドライブできる。しかし少なくともF1は正しい方向へ進んでいると主張することができるだろう。

Critics who loved the fiery crackle of throaty V8s complain that the new engines are too quiet. But that nostalgia over-plays the supposed link between engine noise and the appeal of F1.

もちろん批判はある。V8エンジンの燃え上がるような咆哮に比べれば、新しいエンジンは静かすぎるというものだ。しかし、だからといってF1の魅力が損なわれていると言えるのだろうか。昔は良かったと思う心が、エンジン音を実際以上に大事なものとして誇張しているのではないか。

Ultimately, however, what makes F1 watchable – or not – isn’t noise but the quality and closeness of the racing.

F1を見るべきものにするのは、エンジン音ではない。接近した競争が繰り広げられることである。

Also misleading is the argument that F1 drivers shouldn’t need to economize fuel or tires and instead should be able to race flat-out from first lap to last.

他にも、F1ドライバーは燃料とタイヤを節約すべきではなく、最初から最後まで全力でレースを戦うことができるようにすべきだという主張も、議論を誤った方向へ導こうとしている。

The unfolding chess game during races of teams balancing the need for speed with the need to make tires and fuel last, the strategies they employ and adapt to squeeze the most out of those resources, make F1 a more cerebral sport.

レース中、各チームはタイヤと燃料の消費を管理しながら、可能な限り速く走ろうとする。これはチェスのゲームのようなものだ。持ちうるリソースをすべて使い尽くして戦うために、様々な戦略を採用する。こうした新しい要素は、F1をより頭脳的なスポーツにしているのである。

このジョン・レスターの記事は、AP通信発の記事として、世界中の英語メディアに販売され、掲載されることになった。一見するとF1を否定しているかのような厳しい論調から始まるが、読み進めると2014年から本格化した新時代のF1テクノロジーへの熱い応援メッセージになっている。そうだそうだ、と納得しながら読んだ。

それと同時にこの記事は、エンジン音を元に戻そうとする人たちや、燃費やタイヤなどのリソースに対する規制がレースの魅力を損なっていると主張する人たちを、痛烈に批判する内容になっている。

昔はよかったと言うのは勝手だが、あまりにもその声が大きくなりすぎると、F1がもつ本当の魅力を見失わせ、結果としてこのスポーツを滅ぼすことになるのかもしれない。

(CC) 画像出典:Yas Marina Hotel/ Yas Viceroy Abu Dhabi, UAE. | Flickr - Photo Sharing!